ごあいさつ

 日本は世界でも有数の豊かな自然環境を有する国です。数千年の昔から自然と人間が、また人間同士が折り合いをつける接点を見出し、共に生きてきました。
その中核を成すのが、自然に対してまた異文化を持つ集団との間で折り合いを付けて生きて来た生き方であり、それこそが里山システムとでも呼ぶべき持続可能な社会経済システムなのです。

 里山=SATOYAMAに対するこの説明はお読みなると、一般に考えられている「人家の近くに広がる小さな自然の景観」的なイメージを随分と難しくしまっているとお感じになる方もいらっしゃるでしょう。 しかし里山の本質的な意味を考えると、どうしてもこのようにシステム的に考えざるを得ないのです。
つまり里山の景観を造り出した「自然風土」と「農業技術」、それを可能にした「経済の仕組み」や「生き方の枠組み」、そしてそれらのバックボーとしての日本人の「死生観」にまで遡って考えることになります。
 そしてもうひとつ重要なことは里山の再生を意識したときこそ、この里山をシステムとして考える思考が不可欠になります。言うならば眼前にある景観を造り出している構造の再生に目を向けるということです。

 こうして里山をシステムとして見た時、その対極に思い浮かぶものがあります。
 それは教科書に出て来る「4大文明」の今日の姿です。過去の「偉大な文明」は、すべて砂漠化して滅びています。 この事実に気が付けば先人達の築いた共に生きる方法、里山システムがとても優れていたことに気が付くでしょう。

 21世紀は人口爆発とともに起こる、水、食料、そして環境問題への対応が焦眉の課題となっています。今こそ日本の「里山」の知恵を使うべき時ですが、わずかこの半世紀で里山システムは大きく崩れています。特にその中核をなして来た農家の多くが消えてしまいました。
私たち日本里山協会はもはや農家中心の過去のモデルが通用しなくなった今日、それに代わって多くの都市住民が参加できる新たな里山」システムである自給自足型協同生活基地Wa-arkを提案します。

2011年1月17日

一般社団法人 日本里山協会 代表理事 池田志朗